冬の夜

二十四節気では「大雪」の頃──、
南天の実が赤く色づき、冬枯れの山に彩りを添えます。

大雪とは、雪が本格的に降り出す頃のこと。
野山の生き物たちは、厳しい寒さに備えて冬ごもりの支度を始めます。

冬の気配が深まり、夜空が冴え渡るこの時季。
星々は天高く輝き、
その静かな瞬きには古からの祈りが息づいています。

星の連なりに導かれ、夜空に描かれる星座──。
牡牛座に属する「昴(すばる)」は、いくつもの星の群れ。
その名は“ひとつに結ばれる”という意味の「統(す)べる」に由来すると言われ、
冬の夜空に寄り添うように静かに瞬きます。
その奥ゆかしい佇まいから、詩歌の世界では「寒昴(かんすばる)」、
「冬昴」、「六連星(むつらぼし)」などとも呼ばれ、
冬の季語としても親しまれています。
古くは『古事記』や『万葉集』などにも詠まれ、
人と人の結びつきや調和への祈りの象徴として大切にされてきました。

南の空に光り輝くおおいぬ座の「シリウス」は、
夜空のなかで最も明るい恒星です。
古代中国ではその輝きを狼の眼光に喩えて、
「狼星(ろうせい)」、「天狼(てんろう)」と名付けたのだとか。
北の空高く昇る「北斗七星」は、天の中心である北極星へと導く星々。
古来、かつて人びとはその動きを通して、季節の移ろいや方位、
生死の巡りを読み取ったと言われています。
また、柄杓の形をしていることから「天の器」とも称され、
食を司る豊受大神(とようけのおおかみ)に重ねて信仰されてきました。

星々がいっそう輝き、大地に霜が降り始める夜──、
吐く息も凍てつくような「霜夜(しもよ)」が訪れます。
月明かりや街灯に照らされた霜が、星の瞬きに呼応するように煌めく、
この時季ならではの静謐で美しい情景が広がります。

澄み切った冬の夜は、天と地が近づくとき。
夜空に寄り添う星々を見上げ、
人と人が繋がり、ともに生きることへの祈りと感謝を託して。