節気便り
2025.12.22
冬至
光来る
二十四節気では「冬至」の頃──、
空気が冴え渡り、山々には新雪が積もり始めます。
北半球において一年で最も太陽の位置が低くなる冬至は、
「日短きこと至る(きわまる)」という意味があり、
昼が短く夜が長くなる日のこと。
冬至を境に弱まっていた太陽の力が甦ることから、
「一陽来復(いちようらいふく)」と呼ばれ、
運気が好転する最良の吉日とされています。
古来、暦の起点となる重要な節目とされてきた冬至。
陰が極まり再び陽の力が兆すことから、
厄祓いをして一年の無病息災を祈る慣わしがあります。
柚子の実を湯船に浮かべて浸かる「柚子湯」。
冬至は「湯治」、柚子は「融通が利く」との語呂合わせから、
その香りで邪気を祓い、健康で過ごせるようにとの願いが込められています。
また、冬至には「ん」がつく食材で“運”を呼び込む、
「運盛り(うんもり)」という風習があります。
なかでも「ん」が二つ重なる南瓜(なんきん)、人参、蓮根、銀杏、金柑、
寒天、饂飩(うんどん)は「冬至の七種(ななくさ)」と呼ばれ、
縁起担ぎであるとともに、冬場に必要な栄養素を補う意味合いも。
「ん」の音には、物事が終わり新たによい運気が巡り来るという、
一陽来復の願いも込められています。
冬至を過ぎると、瞬く間に迎える年の瀬。
古くは大晦日の夜、囲炉裏や竈に薪をくべ、
火を灯し続けて夜を越す「歳の火(としのひ)」という慣わしがあったそうです。
かつての人びとにとって火は“家の魂”であり、
絶やさぬ火は家を清め、災いを祓うと信じられていました。
こうした清浄の火は、新年に歳神様を迎え入れるための標しとされ、
大晦日から元旦にかけて境内で焚かれる篝火(かがりび)や、
正月飾りを清めるお焚き上げの炎にその名残が息づいています。
冬至を境に生まれ変わる陽の光に、年の瀬の夜闇を静かに照らす炎──。
大切な節目に受け継がれてきた祈りのかたちに想いを馳せ、
健やかに新年を迎えられますよう。