節気便り
2025.05.05
立夏
端午
二十四節気では「立夏」の頃──、
若葉の緑が眩しく、薫る風に夏の気配が漂い始めます。
立夏とは、四季の始まりとなる“四立(しりゅう)”のひとつ。
この日から八月初頭に訪れる「立秋」までが、
暦の上での夏となります。
五月五日は、端午の節句。
「菖蒲の節句」とも呼ばれ、柏餅や粽を食して、
男の子の健やかな成長を祈ります。
端午とは、“月の端(はじめ)の午(うま)の日”のこと。
元々は五月のみを意味するものではありませんでしたが、
「午(ご)」が「五」の音に通じることから、
五の字が重なる五月五日を指すようになりました。
古代中国では、五月は災厄の多い悪月(あくげつ)とされ、
この日は野に出て菖蒲や蓬などの香り高い薬草を摘み取り、
菖蒲湯に浸かるほか、蓬でつくった人形(ひとがた)を軒先に吊るすなどして、
厄祓いをする風習がありました。
一方、日本では田植え前の大切な時季にあたることから、
田植えを行う若い女性「早乙女(さおとめ)」が身を清めて豊作を祈願する、
「五月忌み(さつきいみ)」という農耕儀礼が行われたそうです。
この風習が結びついて「端午の節会(せちえ)」という宮中行事となり、
薬草を丸く編んだ薬玉(くすだま)を柱に掛けるほか、
貴族同士で贈り合って邪気を祓う習慣が根付いたのだとか。
後に武家の時代を迎えると、菖蒲の葉の形が剣を想起させることや、
菖蒲が武を尊ぶという意味の「尚武」や「勝負」に通じることから、
男の子の勝運や成長を願う日として祝われるようになりました。
端午の節句の行事食として知られる「柏餅」と「粽」。
柏の木は新芽が出るまで古い葉が落ちないことから、
柏葉を用いた柏餅は、子孫繁栄の縁起物として食されるようになりました。
粽は楚の国の詩人である屈原(くつげん)の命日である五月五日に、
川に粽を流して供養したという中国の故事に由来するもので、
関西地方を中心に無病息災を祈って食す風習があります。
青々とした新緑が目を潤す五月──。
菖蒲の香りで心身をほどき、清らかなる端午の祈りを。