花鎮祭

二十四節気では「清明」の頃──、
天地が春のやわらかな光に満ちていきます。

清明とは、清々しく明るく美しいことを意味する「清浄明潔」の略。
草木は芽吹き、鳥はさえずり、万物が清らかに輝き始めます。

春もたけなわ、満開の桜が散りゆくこの時季、
各地の神社では、無病息災と豊作を祈る
「花鎮祭(はなしずめのまつり)」が行われます。

かつては、桜の散る頃になると疫病が流行したことから、
災いをもたらす疫神(えきじん)は、花びらとともに舞い散り、
疫病を振り撒くと考えられていました。
そこで、疫神を祓う宮中行事として、
花鎮祭が執り行われるようになったそうです。

日本最古の神社、奈良の大神(おおみわ)神社と
その境内にある狭井(さい)神社では、
毎年四月十八日、二千年来の伝統を誇る花鎮祭が行われています。
儀式では狂言や能を奉納するほか、
神前に忍冬(すいかずら)や百合根などの薬草を供えることから、
「薬まつり」という名でも親しまれています。

古来の風習では、桜の花を稲の花に見立て、
桜の散り具合を見て、その年の豊凶を占いました。
桜が早く散らないよう「やすらえ(散り急がないでくれ)、花や」と歌う、
春の田唄もあったそうです。
平安時代以降は、こうした農耕儀礼の意味合いと結びつき、
花鎮祭は各地で盛んに行われるようになりました。

咲く花は喜びとともに迎え、散る花は鎮めて送る──。
自然のままに従い、儚げな花に神の姿を重ねて感謝を捧げる、
慎ましやかな日本の心が感じられる行事です。