八朔

二十四節気では「大暑」の頃──、
向日葵や撫子の花が咲き、夏空を彩ります。

大暑とは、一年で最も暑さが厳しくなる時季のこと。
風鈴や打ち水、夕涼みなど、
涼を呼び込む工夫をして暑気払いをします。

旧暦八月一日は、「八朔(はっさく)」の祝い。
稲が実りを迎える時季にあたり、
豊作祈願をする慣わしが各地に根づいています。

月の満ち欠けによってひと月を定めていた旧暦では、
新月を迎える日を月初めとしていました。
「朔」とは新月のことで、「朔日」は一日(ついたち)を意味します。

八朔にあたる旧暦八月一日は、夏から秋へと移ろう季節のあわい──。
早稲(わせ)の穂が開花し、実り始める大切な時季であるとともに、
台風が襲来しやすく農家では厄日として恐れられたことから、
人びとは田の神に供え物をして収穫の無事を祈り、
秋の豊作を予祝したそうです。
このことから八朔は「田の実の節句」とも呼ばれ、
「田の実」が「頼み」に転じて、親しい人や恩人にその年初めての実りである
“初穂”を贈る風習も生まれたのだとか。
やがて農家だけでなく、武家や町人の間でも身近な人に贈り物をして、
日頃の感謝を伝える日として広まりました。
一説にはこの風習がお中元の由来とも云われています。

八朔には古くから伝わる風習があり、
田んぼに出向いて稲の実入りを褒めてまわる「田ほめ」や、
新米を用いた焼米や御神酒を神前に献じる「穂掛け」などの
伝統儀礼が受け継がれています。
また、四国地方では八朔を「馬節句」とも呼び、
男の子の健やかな成長を願う行事として親しまれているそうです。
なかでも初節句には、米粉の団子生地でつくり上げる
「八朔だんご馬」という特別な祝い菓子を飾り、
家族や近所の人たちで盛大に祝うという慣わしもあるのだとか。

自然とともに身近な人へと想いを馳せる八朔の慣わし。
日々に感謝を捧げて祈りを込める、特別な祝いを。