新嘗祭

二十四節気では「小雪」の頃──、
北風が強く吹き、山には初雪が舞い始めます。

小雪とは、冷たい雨が雪に変わる頃のこと。
陽射しが弱まり、次第に寒さが厳しくなっていきます。

毎年十一月二十三日は、
新穀を供えて五穀豊穣を祝う「新嘗祭(にいなめさい)」。
宮中および各地の神社にて神事が執り行われます。

新嘗祭の「嘗」は「ご馳走する、もてなす」ことを意味し、
その年に収穫した新穀を天地の神々に供え、一年の豊かな実りに感謝を捧げます。
その起源は古く、『古事記』や『日本書紀』にも
天照大御神が新嘗祭を行ったことが記されているのだとか。
元々は収穫祭の意味合いをもつ民間儀礼であったという説もあり、
『万葉集』の東歌(あずまうた)には、
女性だけで祭事を行っていたことを示す歌が詠まれています。
古くは「卯の日」が繁栄を象徴する縁起のよい日とされたことから、
旧暦十一月、第二の卯の日(旧暦十一月十三日より二十四日の間)に行われていましたが、
明治以降は十一月二十三日と定められ、
「勤労感謝の日」と名称を変えて国民の祝日となりました。

宮中における新嘗祭は、
飛鳥時代より続く最も重要な「宮中祭祀(さいし)」のひとつで、
天皇が国家と国民の安寧や繁栄を祈るために行います。
前日の二十二日には天皇の霊力を高めるための儀式「鎮魂祭」が行われ、
当日は宮中にある神嘉殿(しんかでん)に
献納された新米や麦、きび、粟、豆の五穀が供えられます。
そして天皇が天照大御神をはじめ、すべての神々である
天神地祇(てんじんちぎ)に感謝の言葉や祈りを捧げ、
神饌(しんせん)として食事や御神酒を供えて自らも口にします。
天皇が共に食すことで神々との絆を深めて力を授かり、
翌年の豊穣を約束するという意味合いがあるそうです。
天皇の即位後初めて行われる新嘗祭は「大嘗祭(だいじょうさい)」と呼ばれ、
一代一度の大祭として受け継がれています。

古より命の糧となってきた、米や穀物などの自然の恵み。
新嘗祭の慣わしには、天地の神々を敬い、
自然と結びついて生きる日本人の慎ましやかな心が息づいています。