節気便り
秋分
2023.09.23
月見
二十四節気では「秋分」を迎える頃──、
野山では萩や葛など、秋の七草が咲き揃います。
秋分とは、太陽が真東から昇って真西に沈み、
昼と夜の長さがほぼ等しくなる日のこと。
この日を境に少しずつ陽が短くなっていきます。
旧暦八月十五日(二〇二三年九月二十九日)は、
澄んだ夜空に浮かぶ満月を愛でる「十五夜」。
ススキや月見団子を供えて月に祈りを捧げます。
十五夜は、古代中国より伝わった月見の祭事と、
日本古来の月を祀る農耕儀礼が結びついた行事。
月の満ち欠けを農事の目安としていた古の人びとにとって、
欠けのない満月は豊穣の象徴であり、
収穫物を供えて秋の実りに感謝し豊作を祈りました。
十五夜の供え物として欠かせないのが「月見団子」。
古くはこの時季に収穫期を迎える里芋を供えていたそうですが、
やがて稲穂の収穫を祝う意味を込めて、
米でつくった団子を供えるようになったのだとか。
地域によって、満月に見立てて丸めたものや、
里芋の形を模して餡子を巻いたものなどがあり、
これを食せば、月の力を得て健康や幸福を招くとされています。
月見飾りには稲穂に見立てたススキの穂とともに、
葛や葡萄など蔓のある植物を飾ると、
月との繋がりが強まり縁起がよいとされています。
かつては特定の月齢の日に月の姿を鑑賞する
「月待ち」という慣わしも盛んに行われていました。
十五夜を過ぎると、月の出がだんだんと遅くなっていくことから、
十六夜はためらうように月が出てくる様を表す「いざよい」、
立ちながら待つうちに出てくる十七夜は「立待月」、
十八夜は「居待月」、十九夜は「寝待月」との呼び名も。
多くの人びとが集って月の出を待ち、
夜通し宴を催してその風雅な姿を愉しんだそうです。
月を愛でて遙かなる宇宙や自然へと想いを巡らせる十五夜。
澄み切った夜空にさえざえと輝く満月を心待ちに。